お役立ちコラム

【終活に拍手】第八回 中小企業オーナーの遺言

2021.03.23



『死は、全員が初体験。だから準備の仕方を知らない。しかし、しっかりとした準備をした人は家族から拍手喝采を受けます。』
今日は『中小企業の社長さんの相続』の話をいたします。
若い時に創業し、がむしゃらに仕事をし、事業を大きくされてきた現役の社長さんや、すでに自分の子供などへ社長の座を譲り一歩離れたところから後継者を見守っている会長さんなど、これらの人々は、会社であれば、ご自分が作った会社の『株』を50%以上持っておられることが多いです。
こんな状態の時、社長さんや会長さんが突然亡くなられたら
どうなるでしょうか?
遺言を作成しているか、いないかで次のような違いがあります。
遺言書を作成していない場合は、会社の株を含めたすべての財産と債務を誰がどのように引き継ぐか話し合いをすることになります。
たとえば、長男が後継者で次男は公務員とします。
財産は会社の株が7000万円、定期預金が3000万円の合計1億円だとします。
長男が会社の後継者であるから、その長男が会社の株をすべて引き継ぎたいと思い、次男との間で話がまとまればいいのですが、それでは、弟は残りの定期預金3000万円を貰うことになり、法定相続分である2分の1の5000万円は貰えないことになりますね。
兄弟で、もめてこの会社の株を会社の経営をしない弟が2000万円分引き継ぐことになると、後々面倒なことが起こる可能性があります。
具体的に言うと、会社の株を持つということは株主になるわけですから、経営に口をはさんできたり、将来その株を買い取ってほしいと長男に言い出したりする可能性があるということです。
では、遺言書を作成していた場合はどうでしょうか?
遺言書の内容は、「長男に会社の株をすべてやる。次男には定期預金を3000万円やる。」です。
この遺言書だと、弟は3000万円しか貰えません。最低限もらえる額(これを遺留分といいます)が、この弟の場合2500万円で、それ以上の3000万円を遺言で指定されているからです。
遺言書が作ってあれば、話し合いが不要なので、株が兄弟に分散することがなく、長男は安心して父親の会社を引き継いで経営していけることになるのです。

苦労して自分の会社を作り上げた社長さんや会長さんは、会社の『株』という特殊な財産を持っておられます。
この『株』というのは、いい会社であればあるほど、相続税の計算をする際の評価額が高くなり、後継者に引き渡す時に、注意して渡さないと後々大きな問題を残すことがあります。
ですから私どもは、専門家として、中小企業の創業者は必ず遺言書を作るべきだと考えています。
遺言があれば、後継者を守るだけでなく社長が作り上げた『事業』を守ることにつながるからです。
また、遺言書には、自筆証書遺言といい、自分で作るものがありますが、遺言書としての要件が欠けていると無効になってしまうことがあります。
その点、手間と費用は掛かりますが、法律のプロである公証人が作成してくれる公正証書遺言を、私どもはお勧めしています。

この連載を読まれて、遺言に関心を持たれた方は、遠慮なく
当事務所までお問い合わせください。


執筆者:田村滋規


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